トリックス☆スターズ

9.闇を焦がす炎

ラピスを乗せたメルヘンチックなカボチャの馬車は、人の形をした物体と共にマトラ旧市街の中央広場にたどり着いて停止した。

広場の中央に少し不自然に見える大きな木が生えており、ラピスは今それに向かって走っている。

ついでに言うと、人の形をした物体もラピスを追いかける為に走っているのだが、その走り方はとても効率が悪そうに見えた。
普通人は左右の足を交互に前へ出して歩くものだと思うが、その物体は片方の足を前に出した後、反対側の足は揃え程度にしか動かさない。
常に片方の足しか前には出さない為、その速度は通常の半分程度なのだ。

また、物体達は走りながらも不定期だが「ふぁ」と言うこもった音を発していた。
それが大勢いる為、広場は「ふぁ」の大演奏の様になってしまっている。

「アハハハハハァーーーッ!」

もうルビーはラピスと物体達の様子を、指を差して爆笑しっぱなしだ。

「木に着いたぞォーーーッ!!
 まさかこれを登れって言うのかーーッ!?」

そう言い「ポン」とラピスが木に触れると耳が痛くなる程低い音の地響きが起こり、それに反応した様に人の形をした物体達は動くのをやめた。

「うわっ!な、、なんだ!?」

大木はその地響きによってか破片を落とし始めている様だ、ラピスの周辺にも木の枝や皮の様なものがバラバラと落ち始めた。

「こういうパタンって大体無駄にでかいボスが出てくるよなッ!」

『そ、そうかもしれないですね』

人の形をした物体達は動くことも「ふぁ」と言う音を出す事も辞め、完全に止まってしまっている。
木の表面の破片が激しく四方八方に飛び散ると、人の形をした物体達にもその破片は当たっていた。
ボテッと言う感じで倒れる物体だが、その後も起き上がる様子はなかった。

そして地響きがおさまり、木の表面が完全に剥がれ落ちた後に現れたものは、モヤシの様に白い色をした物凄く細長い妙なものだった。

「なんだーッ!?あの細長いのは
 ボスかッ!?ボスなのかッ!?」

細長いものを音で表すとしたら「ヒョロ~」だろう。

「おいーーッ!!なんなんだコイツはッ!!」

またラピスが叫んでいる。
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