君を

5

『お昼一緒に食べようよぉ』
『彼女にしてぇ~笑』

喧騒の中心は勿論あの馬鹿。


『また今度ね』


いつもならきっぱり断るのに、ふざけた返事をするから周りの女が更に騒がしい。
眉間にシワが寄るのが分かる。
煩い。

座っている透尚を見ると人垣に囲まれた永久を見ていた。
なんの感情も出さずにただ、静かに瞳を向けるとまた自分の机に乗せた指を俯きながら見る。
あの隣はあなただったのに。

『春、俺の席どこ?』

やばい。
声聞いただけで蹴り倒したい。


春に教えられて透尚の隣の席に着く。

永久は透尚に気付いて少し驚いたようだ。
そんな小さな空気に申し訳無さそうに肩身を狭くして、過敏に反応する透尚が痛々しい。


永久の周りの得意げに透尚を見下ろす女もムカつく。


あんただけは絶対透尚を傷付ける存在にはならないと思っていたのにっっ。


『ごめんね。私のせいでゃ、やな思いさ、させて』

透尚が前の自分の席に座って振り返っていた私にぽつりと言った。

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