君を

8

『お、白石出て来たか、具合はどうだ?』
『まぁまぁです、あ、まだ体育は出れません』
『そぅかそぅか、まぁお前の成績なら問題ないだろ』
当たり障りのない会話をし、職員室を退室する。
今は昼休みだ。
さてどぅするか。
教室や人の多い所は煩くて嫌だ。
きゃんきゃん騒ぐ女生徒にも会いたくない。
記憶が不完全であしらい方がまだ適当に出来ない。
足の向くまま静かそうな場所に進める。
教師との話しも早く終わってまだ昼休みは余裕がある。
なんなら良い所を見付けて午後の授業はフケて休んでもいい。
緑の多い整備された校庭を抜け、小さな花壇のある校舎の裏に行く。
初夏、気持ちよく風も吹いていて、昼寝にはもってこいだった。
花咲く花壇の向こう側、ベンチに座っている人影。
先客か、まぁひとりならいいだろう。
一歩。
足を進めると見える、人。
『相良……?』
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