『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】
第145話

 翌日、日が陰ったシティーホールの芝生で待っていたのは昭太郎だった。

あぐらをかいてタバコに火をつける。

夕暮れの大空を見上げて両手を芝生につき、上に向かって煙をふかした。

「昭太郎!久しぶりやね」
 リュックを背負いながらジーパン姿のチサが笑顔で現れた。

「昭太郎、タバコ吸うんか!」異変に気付いたチサが訊く。

「あぁ、まぁな」

「ウチにも一本くれへん」気軽に言うチサ。

「お前・・高校生だろ」と伺う昭太郎。

「今どきタバコなんて常識やろ」

 さらっと答えるその言葉に
「まぁ、俺は先生じゃねぇーし、俺も吸ってたか・・・」と納得する。

 わりと慣れた手つきでタバコに火をつけるチサ。

「昭太郎はタバコ吸わへんと思っとったわ、だからウチも吸わなかったんや」
 いつものニカッと笑いをかましたチサ。

「で、今日はどうしたんだ?メールよこすなんて初めてじゃん」

「だって、昭太郎、最近ここにに来うへんやんか、なんかあったん?」

「あぁ、いろいろあった」

「そうかぁ、いろいろかぁ」
 少し寂しそうな表情を浮かべたチサは続けた。

「ウチ、もう帰国するんや、もう半年経っちゃったんや、早いもんやね」

「そうか、留学も終わりか」

「そうや、ウチの方が早く帰国することになってもうたな」

「おぉ、もうちょっとで同じ頃に帰国できたかもしれなかったんだけどな」

「どういうことやねん」

「手術できそうだったんだけど、やっぱできなかった」空を仰ぐ昭太郎。

「なんやそれ」

「そのままだよ、そんなことがあったの」

「そうかぁ」ベッタリいちゃつくの外人カップルを見ながら答えたチサ。

「相変わらずチサは物わかりがいいな、っていうか、まぁいいや」つられてその外人カップルに目がいく昭太郎。

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