『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】
第149話
日本では冬を迎える時期、ブリスベンは真夏になる。
アスファルトから立ち上る熱気で揺れる景色を睨みながらゆっくりと足を出す昭太郎の額に汗が流れる。
クリニックの帰り道、26cmを越えない歩幅で足を動かす。
普通の人が5分で行ける距離を30分かけて歩く。
昭太郎は「まだ歩ける、まだ大丈夫だ、俺はやりきる、やりきるんだ・・」と呟きながら地面を踏みしめる。
汗だくでアパートの扉を開けて、座り込む。
靴を脱ぎながら母親に告げた。
「武藤さん移植になったんだって」
「知ってるわよ、早すぎるって、みなさんと井戸端会議しちゃったわよ」
「そう」
「やっぱりAB型は早いのねぇー磯野さんもABだっだし・・・」
武藤の移植はあまりにも早かった。
穏やかに過ごしている昭太郎の心が揺れない訳ではないが、周りがどうであろうが自分の順番が遅くなるわけではない。
自分の番が来るときは来る。
ただそれだけだ。
敏哉に言われた「やりきる」というフレーズは心の安定剤になっていた。
周りでなく、自分がやりきるということ。
それだけに集中していた。
昭太郎の生活は穏やかだった。
微熱が続いたりはしていたが、心が安定していた昭太郎は嘆くことが少なくなっていた。
日本のビデオを繰り返し見たり、本を読んだりしながら過ごしていた。
★
日本では冬を迎える時期、ブリスベンは真夏になる。
アスファルトから立ち上る熱気で揺れる景色を睨みながらゆっくりと足を出す昭太郎の額に汗が流れる。
クリニックの帰り道、26cmを越えない歩幅で足を動かす。
普通の人が5分で行ける距離を30分かけて歩く。
昭太郎は「まだ歩ける、まだ大丈夫だ、俺はやりきる、やりきるんだ・・」と呟きながら地面を踏みしめる。
汗だくでアパートの扉を開けて、座り込む。
靴を脱ぎながら母親に告げた。
「武藤さん移植になったんだって」
「知ってるわよ、早すぎるって、みなさんと井戸端会議しちゃったわよ」
「そう」
「やっぱりAB型は早いのねぇー磯野さんもABだっだし・・・」
武藤の移植はあまりにも早かった。
穏やかに過ごしている昭太郎の心が揺れない訳ではないが、周りがどうであろうが自分の順番が遅くなるわけではない。
自分の番が来るときは来る。
ただそれだけだ。
敏哉に言われた「やりきる」というフレーズは心の安定剤になっていた。
周りでなく、自分がやりきるということ。
それだけに集中していた。
昭太郎の生活は穏やかだった。
微熱が続いたりはしていたが、心が安定していた昭太郎は嘆くことが少なくなっていた。
日本のビデオを繰り返し見たり、本を読んだりしながら過ごしていた。
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