『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】
第152話

 敏哉はたった3日で帰っていった。

 たった1人で大切な正月という時期に来てくれた行動に昭太郎は思いやりと人としての大きさを感じていた。

俺が逆の立場だったらできるだろうか?いや、そういう人になりたいと昔から思っていたのだ。

昭太郎は昔から敏哉のデカさに憧れていたのだ。

中学の時、毎日敏哉の家に通っていたのは、こんなヤツになりたいと思っていたからだ。

ヤツの聴く音楽を真似して聴いて、友達の多さとヤツの言動に憧れていた。

もちろんヤツは中学のヒーローだった。


敏哉の背中を見送りながら、昔のことを思い出していた。

ヤツは俺の偏差値が下がる分だけいろんなことを教えてくれたなぁと考えていた。

バイクも夜遊びもみんなヤツから教わったんだと・・・思い出していた。



 【あの頃の僕は、もう誰から見ても足が不自由にみえる自分の姿を情けなく、そして恥ずかしく思っていた。しかし、眉一つ動かさず、変わらない笑顔を見せてくれたヤツに感謝していた・・・いつかヤツのためになることをしたいと心に刻んだ。】



30℃越えの正月早々に日本から宅急便が届いた。

ビデオにはNHKの紅白歌合戦が録画されていて、ダルマは少し小さめの物だった。

早速ダルマの裏には「元気で日本に帰れますように」と書いて片目に墨を入れた。

そして、同封されていた手紙には初雪が降りましたと書かれていたことと、昭太郎の知らない唄が紅白で歌われていることに日本との距離を感じた・・・。



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