『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】
第27話

 医大に入院して1週間が過ぎようとしていた頃。

初めての入院の時のように、由紀が現れた。

「ばか!1ヶ月も連絡よこさないと思ったら、こんなとこにいて」
 怒鳴り声は病室中に響き渡る。

「私はあなたのマネージャーじゃないんだからね、毎日毎日いろんな人から電話がかかってくるんだから、『昭太郎どうしてる?』って電話がかかってくるんだから・・・・」
 そうまくし立てたと思うと、突然泣き出した。


 電気もついていない1階のロビーに座る2人。

自動販売機の明かりが2人を軽く照らしている。

泣きっ面の由紀にカンコーヒーのブルタブを開けて手渡した。

「ごめん、俺さぁ、やっぱり、体の調子悪いんだけど・・・、何処の病院行っても病気じゃないって言われてさぁ、何処の病院行っても、ストレスとか、精神からくるものだとか言われてさぁ・・・、由紀とかみんなに何て言っていいかわからなくて、なんか悩んでるんじゃないかと思われるのも嫌で、弱いヤツだなぁって・・・でも、まだ俺はやれるっていうか、・・・・何て言っていいか今でもわからないんだよ」
 と考えながらぎこちなく話す昭太郎。

 由紀が鼻をすする音が響くロビー。

少しの沈黙。

「何でもいいじゃない、病気だって、何だっていいじゃない、別に何も変わらないじゃない・・・・」

「でも、こんなんじゃ俺、何もしてあげられないし、迷惑かけるかもしれないし」

「迷惑かければいいじゃない、また良くなればいいじゃない」
 また泣き出した由紀の肩を引き寄せた。

「そうだな、良くなればいいんだよな・・・・ありがとう」

「そうよ、私は彼女なんだから」

「彼女?・・・」

「そうよ、私は昭太郎の彼女なのよ・・・」

 昭太郎は由紀の肩にあごをのせて「俺、がんばってみるわ」と呟いた。

 何をするわけでもなく、しばらくそのままの2人・・・。


・・・・・


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