天使の足跡

僕のギターは、固く冷たい地面に容赦なく叩きつけられた。


とっさに、だ。


涙を浮かべて走ってくる太田を抱き留めるために、大切なギターを犠牲にしたのだった。


事を理解するには優十秒は要したと思う。


ギターの代わりに僕の両手を塞いでいる彼に、何も言えなかった。


彼の腕から伝わる温もりが、僕の首筋元を覆っていた。


「ありがとう──」


耳元で聞こえた声に、鼻をすする音がほんの少し交じっている。


「……決めたよ。これからも、赤として、青として、生きていくって」


声を詰まらせてこう続けた。


「拓也くんと友達になったのは、2つの色を持った自分だから──」

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