天使の足跡
僕は今日、太田が言っていたことの意味をようやく理解した。


太田に逢った時、「関らないで」と言われたその言葉の意味が、その情けが、ひどく身に染みた。


僕は言いたいことをはっきり言えない性分だから、周りの言動に流されて、皆が「黒」と言えば僕も「黒」としか言えない。


結局、今だってそうだ。


本当は、太田はいい奴なのに、周りが悪いと言うから本心を言えなかった。

本人が傍で聞いていたとしたら、どんなに傷つくだろうか。


僕は、急にこみ上げた罪悪感に眉を顰めた。






“胸を張って
 そう言えないなら、
 本当の友達なんか
 じゃない。

 ただの取り巻き
 でしかないんだ。

 それって、すごく
 傷つくはずだ。


 僕が関わることで、
 互いに傷つくことにしか
 ならないって、太田は
 分かっていたのかも
 しれない。


 『関わらないで』と
 言われたその一言さえも、
 意味のあるもののように
 感じるよ──”









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