天使の足跡






体育館を駆けめぐる足は、キュ、キュと高い音を鳴らしていた。


爽やかなテンポで続くドリブルの音も、シュートの時のネットを掠める音も、心地よいほど全身に響き渡る。


様々な角度から投げ入れられるボールは、時々ネットを通るだけで、他はほとんどリングに拒まれていた。


「太田!」


振り向き様に、部員の1人がボールをパスしてきた。


上手くキャッチして、スリーポイントのラインからそれを打つ。



彼の放ったボールは緩やかな弧を描き、見事にネットに歓迎された。

ボールを譲った部員が軽い拍手した。


「練習来てない割に、完璧じゃねーか!」

「まあね」

「お前より真面目に部活やってんのに、またレギュラーの座取られるな」

「自分はサボってばっかりだったから、今度は三谷の番だよ」

「だといいけど」


癒威と三谷は、1年の頃から同じクラスで、いつも親しくしている。

今ではレギュラーの座を争う、仲の良いライバルでもある。



やがて、部員たちがまばらに部室へと引き返し始める。

三谷が時計を見上げた。


「俺らもそろそろ戻ろうぜ、HRに遅れる」


部室に入った瞬間、ガヤガヤ男子生徒の声が充満する。

スプレーの音や、香水や汗の匂い、豪快な笑い声と、ロッカーを開閉する音。


その騒音に混じって、練習着を脱ぎながら三谷が発する。


「お前さぁ、マジで部活来いよな!」


夏服のシャツに袖を通しながら、癒威が言う。


「自分がいない方がやりやすいって喜んでたくせに?」

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