天使の足跡
確かに二人は似ていた。


拓也も加奈も、一緒にいて安心できた。

ぱっと見たり、話したりしただけで惹きつけられる人というのは結構いるもので、拓也と加奈もその類(たぐい)だなと思う。



ふと、不要な考えが廻る。



自分の秘密が加奈に知れることはないだろうが、例えば知れてしまった場合、冷たい目で見ないでくれるだろうか……?



その思考は、突然に放送によって掻き消された。


担任の放送によって呼び出されたのは加奈だった。


「あ、ちょっと行ってくるね」

「うん」




加奈と別れて一人、人気のないトイレに向かう。


入口のドアを押した時、中にいたのは三谷だった。

加奈と話している間に目が覚めて、やっと活動を始めたらしい。


「おはよ、三谷。さっきはよく眠れた?」


からかうように笑った癒威が個室のノブに手を掛けると、三谷は問いにも応えず大真面目に切り返す。


「また個室かよ?」


単に聞かれただけなのに、ぐっと心臓を握られたような気がした。

まさか、こんなことで秘密はばれないだろうとは思うけれど、何かいらぬ心配をかけてしまいそうで。


中に入ってドアを閉めた。

ドア越しに、三谷が言う。


「具合とか、悪いのか?」
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