天使の足跡
内側で、ドアに背を付けて応える。
「何で?」
「何か……個室ばっかり入ってるような気がして……って、俺の思い過しか!
でも、具合悪いんだったら言えよ? 何かお前って、急にどっかにいなくなりそうな感じすんだよな」
「はあ? 何でいなくなると思うの?」
「分っかんねえ。言ってみただけ」
「三谷って、変なヤツ! だから彼女出来ないんだ」
「るっせぇ、バーカ!」
ドアの内側で、蛇口をひねる音を聞いていた。
「急げよ、そろそろ休み終わるぜ!」
それからすぐに、三谷が出ていくのが、ドアの音で分かった。
癒威は酷く焦りを感じていた。
三谷が心配してくれている。
自分は、何の病気でもないのに……。
友達に嘘をついて、誤魔化さなければならないなんて……
辛い──。
いつまで、無意味な嘘をつき続ければいいんだろう──。