聞こえる。

警察に住所を言ったとき…突然ガラスが割れた。



「?!」
「お前か…お前が小百合を……小百合を、返せ!!」

『橋本さん?!橋本さん!』



電話から声が聞こえたが、そんなところでは無かった。
あいつが包丁をぶんまわして部屋に入ってきたからだ。



「ちくしょ…」



椅子を投げ、机を倒して必死になったが父親は物が当たるのも気にしないで突っ込んでくる。


「拓海くん?!」
「来るなっ小百合!!」
「小百合ぃぃ!」
「ひっ…」



小百合の手を引いて、2階に上がり自分の部屋の鍵を閉める。そこにタンスを引っ張って置き、家具を全て置いた。



「少しは時間がかせげるはずだ…今のうちに…警察がくれば……」



必死になって家具を押さえ付けた。だから自分たちだけに必死になり…この家のもう一人の存在を忘れていた。



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