精神の崩壊
 その頃、千秋は夜の公園をぶらつきながら、また良からぬ事を考えていた。
 
 千秋は、離婚した後売れっ子と為った正春にたびたびお金の無心をしていたのだ。
 
 今日も、明日近くで正春のサイン会があるのを知り、正春から金をせびり取るつもりで近くの公園に来て、下調べをしていたのだった。
 
 千秋は、ふて腐れた顔をしてぼやく様に言った
 
 「あの人は多分、この公園へ来るわ」
 「正春と私と千春とで昔よく来てたわねっ……」
 「この公園……」
 
 そして、千秋は暫くして夜の街へと消えて行った。
 
 サイン会が行われるお店の前には、既に熱狂的ファンの一部の人達が列をなしていた。
 
 中には、胸の所に正春Loveと書かれたお手製のシャツを着ている者もいる。
 
 彼らからしてみれば、真剣なのだろうが、興味の無い者からみれば、ただのご苦労極まりない行動だ。
 
 その列の中には、そんな彼らを馬鹿にして罵っている酔っ払いや、柄の悪い連中等がいて、ちょっとした揉め事が起こっていたため、警察がその対応をしている姿等もあった。
 
 「おまえら邪魔なんだよ」
 「この、オタクがーーっ」
 「何だと、この野郎ーーっ」
 「ぶっ殺すぞ、てめーーっ」
 
 様々な罵声が飛び交い深夜の街に響き渡っている。
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