精神の崩壊
サイン会当日
 良子は、朝から鏡の前に立って、一生懸命お洒落をしていた。 
 「今日は、待ちに待ったサイン会だっ」
 「楽しみだなっ」
 「また、隠し撮りしちゃおうかなっ」
 
 そんな事を言いながら、鏡と睨めっこする事2時間……。
 
 良子は、やっと落ち着いて、壁に貼ってあるポスターを眺めていた。
 
 昨日、デパートでくすねて来たポスターだ。
 
 「やっぱり、芸術ねっ」
 「流石は、正春ね」
 
 そんな独り言を言って、ぼんやりしている間に、家を出なければいけない時間に為った。
 
 良子は、慌てて荷物を持って家を出ようとしたが、忘れ物に気付き、部屋へ戻った。
 
 「デジカメ、デジカメっ」
  「今でれば、1時間位は早く着くからなっ」
 「チャンスがあったら……」

 そう言って、良子は家を後にした。
 
 その頃、千秋は例の公園で、正春と千春が公園へ来るのを待っていた。
 
 しばらくすると、正春と千春が手を繋いで来るのが見えたので、千秋は正春達の方へ歩いて行き声を掛けた。
 
 「あらっ」
 「お二人さん、久しぶり」
 「千春、元気してたっ」
 
 千秋は、ウインクをして、千春の頭を撫でながら言った。
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