精神の崩壊
 千春は、千秋の手を払いのけて、つんとした顔をしている。
 
 「何の用だ」
 「また、金か」
 
 正春の問いに千秋は
 
 「察しが良いわねっ」
 「解ってるなら、宜しく」
 「チュッ」
 
 と、投げキッスをしながら、おどけて言った。
 
 「全く、お前って奴は……」
 「これで良いか」
 
 正春はそう言って、財布からお金を取り出し、千秋に十万円 を渡した。
 
 千秋は
 
 「また今度宜しくっ」
 
 と言って、正春から貰ったお金にキスをして、お金をひらひらとさせて、ポケットに入れ、おどけてみせた。
 
 「もう二度と来ないでくれ」
 「もうお前に遣る金は無い」
 
 正春は千秋にそう言ったが、千秋は
 
 「そう言いながら、何時もくれるじゃない」
 「ウフフフッ」
 
 と言って去って行った。
 
 そして、その様子を物陰から見詰めている者がいた。
 
 〈ウフフフッ〉
 〈正春〉
 〈見付けた〉
 〈ウフフフフフッ〉
 
  そして、物陰から正春達を、隠し撮りしだした。
 
 カシャカシャカシャ……
 カシャカシャカシャ……
 
 シャター音が、正春達の聞こえない所で不気味に鳴り響く。
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