精神の崩壊
 〈正春、守って上げる……〉
 〈私だけの人……〉

 そして、女は消えて行った。

 そうとも知らない正春達はのんびりと食事を済ませ、その後人気の無い砂浜で桜貝等の貝殻拾い等をして遊んでいた。

 「千春、此処にもあるよ」
 「本当だ、綺麗だねっ」

 何も知らずに無邪気にはしゃぐ千春を見て、正春は心を痛めていた。

 自分の犯した馬鹿な行動のせいで、大切な娘を殺人犯の娘にしてしまった。

 娘が真実を知った時、果たして娘は自分に付いて来てくれるだろうか?。

 しかし今は逃げるしかない。

 娘を手放す訳にはいかない。

 「千春、そろそろ行こうか」
 「うん」
 「今度は何処に行きたい?」
 「うん、山が良い」
 「解った、じゃあ行こうか」

 そして、正春達は港街を後にし、山へ向かって行った。


 その頃、警察も必死の捜査を行っていたが未だ行方を掴めずにいた。

 「夜通し聞き込み捜査をしていますが、未だ目撃情報等は入っていません」
 「そうか、畜生……」
 「こちらも収穫無しだ」

 何時誰に聴いても帰って来る答は収穫無しと言う返答のみ。

 気持ちばかりが先に進み、何時も空回り終わる。
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