隣人の狂気
さっき叔父さんと二人で登ってきたばかりの階段を、今度は一人で降りて行く。

ゆっくりといつものペースで歩いて死体へ向かった。

このシネマコンプレックスとデパートの隙間の空間へ夜中に一人で来るのは初めてだが、あまりにも閑散としていてワタシ好みだ。

たった百メートルぐらい離れた道路ではバンバン車が行き来しているのに、ここでは風の音さえなく全くの無音だ。

死体から少し離れた場所に立つ。

そばまで行かなかったのは、血とかが靴に付いたら『キタナイ』と思ったからだ。

アレはもうワタシにとって恩人じゃなく嫌悪の対象だった。

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