隣人の狂気
まだ血を流し続ける死にたての死体を見るのは初めてだ。

あの人にとっての初死体はどんなだったのかしらとぼんやり思う。

せっかく人気がないのだからじっくり観察して目に焼き付けよう。

そして落とした時の感触と共に思い出し、記憶を反芻するのだ。

音もなく夜風が見開いたままの叔父さんの睫を揺らしてゆく。

と、その時!

叔父さんの眼球がゆっくりとわずかに動いて、そばに立つワタシを捉えた。


まだ生きている!

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