隣人の狂気
かわいそうだかわいそうだと思いながら尾行を続けた。

彼女は目的地をよく知らないのか、時折キョロキョロしながら気まぐれのように細い路地に入って行く。

見失う事を別段恐れずに変わらない足取りで彼女の入って行った路地へ向かう。

途中でたまたま目に入ったショーウィンドウに俺自身が映っていて驚いた。

かわいそうだと思っていたはずなのに、俺の唇の端はつり上がっている。

それを知って益々笑みが深くなった。

俺は今、楽しんでいる。

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