愛してるの言葉だけで。


「夏希……俺のこと嫌いになった?」


「えっ?」



不謹慎だけど、

幸信が可愛く見える。



「ねぇ…俺のこと嫌い?」



当たり前に私はブンブンと顔を横に振った。


そんな…

嫌いなわけない。

嫌いになれるわけがない。



「そっか!良かった」



満面の笑みを浮かべた幸信に「ごめん」と言おうとした時、



「あら、そんな所でなにしてるの?」


「お、お母さん!」



心臓が飛び出るかと思った。


お母さんが言う“そんな所”とはトイレの前であって……



「トイレに行かないならそこどいて~」



──バタンッ


扉が閉まる音が廊下に響いた。

そして安堵ののため息をもらしたのだった。
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