愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
でもわかる。
でも聞こえる。
嫌でも入ってくるその声に、私の眉間にしわが寄る。
「どういうつもりなんですか、これは?」
取り戻していく視界の端に見えた相手に向かって私は言葉を投げた。
恐ろしいほど高い場所にいる。
見えるのは白い雲を抱えた水色の空と、小さな建物たち。
僅かに揺れる足元は不安定で、微かな隙間から風が入り込む小さな音が奇妙なほど大きな音に聞こえる。
私の前には岳尚様がいた。
狭い空間、閉ざされた空間。
丸い形をしたその密室。
そう、観覧車。
恋人たちが愛を語り合う、遊園地では最高に盛り上がるだろう場所に私は岳尚様と今二人っきりでいる。
特に縛られるでもなにもなく、ただそこに座らされていた。
岳尚様はそんな私にフフフと笑って見せ、「ゆっくり話がしたいから」とだけ答えた。
二人っきり。
ここに香椎くんの姿はない。
それがすごく、本当にすごく不安でたまらない気持ちになる。
後ろにも、横にも、前にもいない。
大きな背中も、大きな手も。
頼れる胸も、笑顔もない。
大丈夫だろうか?
どこにいるんだろうか?
「そんなに心配かねぇ、あの男が」
そんな岳尚様の声と言葉に、自然に額に青筋が立ちそうになった。