聖霊の宴
どこからともなく聞こえた声にアンドレは震えた。
「おいおいまさか、本当に神様が現れたってか?」
その問いへの答え。
カツ。と足音がしてアンドレが振り返えると、そこには優しく微笑む太った男がたっていた。
「くそっ。こんな所まで追って来やがってなんなんだよ!!」
アンドレは先ほどくすねたシルバーのナイフを投げる。
「『ノーム』壁を。」
男がそう囁くと、まるで植物が生えるかのように丈夫な壁が地面から突き出した。
壁はいとも簡単にナイフを跳ね返す。
「くそっ。こうなったら何処までも逃げてやる。」
アンドレは走って出口まで行くが、扉はびくともしない。
「何だよ。おい!開けよ!!開けっつってんだろ!!!」
大の大人が本気で蹴り破ろうとしたが、全く歯がたたない。
「やめなさい。この協会はノームに造らせた。扉を開けるも閉めるも私の思いのままだ。」
背後に迫った男がアンドレの肩をポンと叩いた。
冷や汗が吹き出す中でアンドレが振り返り問う。
「……あんた何なんだよ?」
男はにこりと笑った。
「私はしがない牧師。名をシム・ジェファーソンと言います。では迷える子羊よ、そなたに永遠の安息を……」
アンドレの断末魔も協会の外へと響くことはなかった。
その日、周辺に住む者の何人かが見知らぬ協会を見た。と言ったが、その場所に協会などなく。
何か建物を建てられる様な地盤はしていなかったと言う。