聖霊の宴

どこからともなく聞こえた声にアンドレは震えた。

「おいおいまさか、本当に神様が現れたってか?」

その問いへの答え。

カツ。と足音がしてアンドレが振り返えると、そこには優しく微笑む太った男がたっていた。

「くそっ。こんな所まで追って来やがってなんなんだよ!!」

アンドレは先ほどくすねたシルバーのナイフを投げる。

「『ノーム』壁を。」

男がそう囁くと、まるで植物が生えるかのように丈夫な壁が地面から突き出した。

壁はいとも簡単にナイフを跳ね返す。

「くそっ。こうなったら何処までも逃げてやる。」

アンドレは走って出口まで行くが、扉はびくともしない。

「何だよ。おい!開けよ!!開けっつってんだろ!!!」

大の大人が本気で蹴り破ろうとしたが、全く歯がたたない。

「やめなさい。この協会はノームに造らせた。扉を開けるも閉めるも私の思いのままだ。」

背後に迫った男がアンドレの肩をポンと叩いた。

冷や汗が吹き出す中でアンドレが振り返り問う。

「……あんた何なんだよ?」

男はにこりと笑った。

「私はしがない牧師。名をシム・ジェファーソンと言います。では迷える子羊よ、そなたに永遠の安息を……」


アンドレの断末魔も協会の外へと響くことはなかった。

その日、周辺に住む者の何人かが見知らぬ協会を見た。と言ったが、その場所に協会などなく。

何か建物を建てられる様な地盤はしていなかったと言う。



< 49 / 406 >

この作品をシェア

pagetop