【短編】クリス王子とセシル姫
クリスの父が王位について、アーサーの父がマーカスを含むこの地方一帯の領主となった時から離れて暮らすようになったが、今でも会えば昔のように気軽に話をする仲だった。

「セシル姫とは、婚儀の時以来ですね。
またお会いできて光栄です」

アーサーは言いながら、自然にセシルの手をとってその甲に口付けた。

ただの挨拶と知りつつ、クリスは思わず顔をしかめる。
セシルは余所行きの微笑みを返している。

「お疲れでしょう。
部屋に案内させます。
夜まで少しの間、体を休めてください」

アーサーの言葉に、セシルは「有難うございます」と言ってまたにっこり微笑んだ。

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