半熟cherry
向かい合わせに置かれたソファーのひとつには。
間違いなく私が着ていた服と下着が。
無造作に置かれていた。
もうひとつのソファーには。
彼のものだと思われる服が。
やっぱり無造作に置かれていた。
………どうしよう………。
ホントに、覚えてない……。
…唯一、覚えているのは。
内定が決まった私に。
“好きな人ができた”
と、別れを告げた彼氏がいたこと。
ソファーの間にあるテーブルに置かれた食べかけのプリン。
“…ほら、結べた”
プリンの飾りにのってたサクランボ。
そのサクランボの茎を口に含むと。
器用に結んで見せてくれた。
……その瞬間だけ……。
その時。
彼の舌によって結ばれたサクランボの茎は。
使っていない灰皿の中に置かれていた。