俺様先生と秘密の授業【完全版】
 岸君の登場で、やや緩んだ直斗の手をすり抜けて、声の方を見れば。

 岸君は、少なくとも、一回はバイクで転んだらしい。

 ちょっと前に見たときより、なんだかボロボロになってる。

 岸君は、バイクに乗ったまま。

 あたしたちの方にやって来た。

 その表情は、メットに隠れてわからないけれど。

 荒いエンジン音から察するに、相当怒っているらしかった。

 案の定。

 あたしのすぐ近くまで、ひゅ、とバイクを寄せた岸君は。

 ばっ、とメットを脱ぐと怒鳴った。

「こん、の、早瀬倉!」

 あたしを相手よりも。

 怒り狂っている岸君の相手の方がしやすいらしい。

 それでもさりげなく、あたしを自分の背中に隠すと。

 直斗は、にやり、と笑って岸君の怒りを受け止めた。

「……完全にまいた、と思ったのに。
 お前、良くここまで来たな」

「るさい!
 こっち方面の、狼が集まりそうな場所を片っぱしから、探したんだっ!」

 そう、怒鳴る岸君に、直斗は大げさに肩をすくめて見せた。

「……先生、って敬称と敬語を忘れてるぞ、岸。
 お前、単車に乗ると、性格変わるタイプか?」

「ふざけんな!
 何が交通法規だよ!
 めちゃくちゃなコトをしやがって!」

「俺が何かしたか?
 ただ、道を普通に走っただけだ。
 勝手にヒトのケツを追いかけた挙げ句。
 自滅した奴らの面倒なんて見ないぜ?」
 


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