俺様先生と秘密の授業【完全版】
「……き、岸君っ!
 ちょっと、何を……!」

「……手、ごめんね」

「別に、岸君にやられた訳じゃないし」

 引っ込めようとした手は。

 岸君が放さないまま、彼が更に近づいた。

 抱きしめられそうなほどの近さに、横を向くと。

 岸君は、身をかがめて、あたしの耳元でささやいた。

「私が……ううん。
 ……オレが。
 しっかりしてれば、しなくて良いはずの、ケガだった」

 言って、岸君は。

 手を離すと、あたしの肩に軽く、自分の額を預けた。

 その様子が、とても落ち込んでいるように見えて。

 あたしは、無事な手で岸君の肩に手を添える。

「岸君」

 もしかしたら。

 ……いや、違う、きっと。

 岸君も、ココロに、誰にも言えない何かを、抱えているに違いなかった。

 岸君は、そのまま、静かにささやいた。

「別に、自分がやられているだけなら、どうってこと無かった。
 だけど。
 加月さんに、こんなに迷惑をかけるなんて……!」

「別に、あたしは良いのよ。
 ただのお節介で、勝手にやったんだから。
 それよりも、岸君。
 本当は、普通にしてられるなら。
 教室でも、このまま居れば良いのに」 
< 55 / 362 >

この作品をシェア

pagetop