俺様先生と秘密の授業【完全版】
「……バレた。
 加月さん、走って!」

 天竜組の声に、岸君は舌打ちをすると。

 進む速度を更に上げた。

 けれども。

 天竜組とあたしたちの距離が、みるみるうちに、縮まってくる!

 ごめ……んっ!

 足の遅いあたしのせいだよね?

 自分の中では、一生懸命走ってるつもりなのに、追いかけて来る方は、もっと速い。


 だ、ダメだ~~


 どこにバイクがあるのか、わからないけどっ!

 バイクにたどり着いても、エンジンを掛ける余裕が無いと逃げられないよ~~

 なのに、天竜組は、あっという間に近づいて来た。

「き、岸君っ!
 あたし置いて、先逃げてっ!」

 このままじゃ、二人とも捕まっちゃう!

 岸君の足は速いもの。

 あたしさえいなければ、きっと逃げられる。

 言って、つないでいた手を振りほどこうとしたら、岸君は、ますます握っている手に力を込めた。

「イヤだ!
 加月さんを置いてなんていけないよ!」

 逃げるときは、絶対一緒だって言う岸君に、あたしは首を振った。
 


< 86 / 362 >

この作品をシェア

pagetop