俺様先生と秘密の授業【完全版】
「岸君が、先に行ってバイクを取って来て。
 そして、もし、余裕があったら、助けに来てよ」

「でも……!」

 あたしの提案に。

 一度捕まったら、無傷、無事で逃げるのは難しいのは、判ってて、岸君は言い淀む。

 だけど、このまま二人仲良く、マトになることはないもんねっ!

 あたしは、強引に手を振り切ると、力一杯岸君を押した。

「もう!
 早く、行ってってば!」

「わ……判った!
 じゃ、すぐに、迎えに来るから!」

 あたしの剣幕に驚いたらしい、岸君は。

 あっという間に走って行くと、視界の隅に映るバイクに飛び乗った。

 息を整えながら、あたしも、それを確認する。

「あれが、岸君のバイクね」

 と、顔を上げたそのとき。

 あたしは、今まで岸君が握っていてくれた、右手を掴まれた。

「きゃ……っ!」

 切れた息に、悲鳴が半分くぐもった。

 ケガをしていない方で、まだ良かったけれど……

 手をつかんだのは、天竜組の一人だった。

 その人は、あたしを見て、憎々しげに言った。

「アンタか。
 岸の女ってヤツは……!」
 


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