俺様先生と秘密の授業【完全版】
「べ……別に、あたしは岸君の彼女じゃ無いし!
 岸君だって、沈黙の狼のヒトじゃない!
 上着は、クラスメートに無理やり……!」

「……着せられたのに。
 脱いだら、ざっとでも、たたんで紙袋に入れるのか?
 普通、敵の上着なら。
 破ったり、踏みつけなくても、脱ぎ捨てて放っておくだろ?」

 ……やだ、このヒト。

 クラスメートをやっつけながら、見てたんだ!

「上着は、岸自身か、彼女のアンタのものじゃないのか……!」

 ……当たり。

 なんて、言えるわけなかった。

 けれども。

 焦ってじたばたしているあたしを見て、答えは、まるわかりだったみたいだ。

 あたしを捕まえた、天竜組のヒトの表情が、凶悪になった。

「今日は、帰れると思うなよ!?
 これから拉致って東屋さんの前に引き出してやる!!」

 イヤだってば!

 冗談じゃないわよ!!

 そんなヒトの前に、なんて行ったら絶対バレる。

 ん、で、今日は、どころか二度と、おうちに帰れなくなるかもしれないじゃない!

 それに兄貴にめちゃくちゃ迷惑をかける。

 だって、兄貴は。

 あたしのためにだったら、どんな汚い条件でも呑むだろう。

 誇り高い兄貴が、誰かの前にひざまづく姿なんて見たくなかった。

 だから。

 このまま天竜組に捕まって、人質になるわけには、ぜっったいに、いかなかった。
 
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