俺様先生と秘密の授業【完全版】
 あたしは、なんとか、そいつの手をはずそうと。

 傷ついた手も使って、力一杯、暴れた。

 手はとっても痛くて。

 ふさがりかけた傷のどこかが、開いたような気がしたけれども……!

「あっ、女が逃げやがった!」

 なんて、言う声を後ろに聞きながら走りだす。

 とはいえ。

 もともと、足が遅くて、岸君に先に行ってもらったぐらいなんだもん。

 もう一回捕まるのは、時間の問題、以前よね。

 すぐに大きな手が、あたしを捕まえにかかる。

 と。

 ここで初めて。

 頼もしい、バイクのエンジン音が、あたしを助けに来てくれた。

 大きなバイクが、あたしと天竜組のヒトの間に割って入って来てくれたんだ。

「……岸君!」

 だと思って。

 ようやく顔をあげた先には。





 ……違う人が、いた。
 
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