俺様先生と秘密の授業【完全版】
「……早瀬倉先生……!」
なんで、こんな所にバイクに乗った先生が来るの……!
しかもバッチリ、皮ツナギを着て。
沈黙の狼のエンブレムなんかは、どこにもなかったけども。
メットから手袋、ブーツまで全部を黒で統一しているその姿は。
ムカシ、狼だった頃、みたいで。
「何だか、少し、カッコいい」
……っていうか。
本当は、喧嘩が出来ないほど弱くても。
素姓のはっきりした、完全に味方だって言うヒトに出会えて。
安心して、力が抜けそうになった。
「少し、なんていうなよな。
俺はいつだって『すごく』カッコいいんだ!」
なんて。
早瀬倉先生は、相変わらずの口調でそう言うと。
迫って来た天竜組の一人をバイクで脅して、手を伸ばした。
「愛莉、おいで!」
正直。
早瀬倉先生の助けが、嬉しかった。
これで安心、と。
あたしも早瀬倉先生のバイクに近づき、返事をしようとしたとき。
すぐ側にバイクがもう一台、滑り込んで来たのが見えた。
「加月さん!
乗って!!」
その声は。
今度こそ、岸君だったんだ。