俺様先生と秘密の授業【完全版】
「こんな所で立ち話しているヒマはない。
 愛莉、乗れ!
 岸、ついて来れるか!?」

 いつもよりは、だいぶ、てきぱきと指示を出して。

 あたしに伸ばした、早瀬倉先生の手を岸君は払った。

「ダメだ!
 加月さんには、私の後ろに乗ってもらうから!」

「岸!」

「現役離れて、ただの先生になったヒトよりも!
 今ならわたしの方が速い、自信がある!
 タンデムするなら、絶対、私の方が良いよ!」

 そう言って、今度は、岸君があたしの方に手を伸ばそうとした。

 けれども。

 その前に、早瀬倉先生は。

 あたしを抱き寄せると、そのまま、ひょいと、自分のバイクの後ろにのせた。

 あたしの意見をまったく聞かずに!

 まるで、荷物みたいに!

「きゃ……っ!
 わわわっ!」

「早瀬倉っ……!」

 乗っけられたバイクの先でバランスを崩し。

 思わず、先生の背中に抱きついちゃったのと。

 岸君が、不満そうに声を上げたのが、ほぼ一緒だった。

 そんなあたしたちを完全に無視すると。

 早瀬倉先生は、すぐバイクを発進させて、怒鳴る。

「お前なんかに、愛莉を渡せるか!
 それに、そもそも。
 愛莉を乗せたら、お前、そのまま公道を暴走する気だろう!?
 一応、ガッコの先生ってヤツを張っている以上。
 教え子に、交通法規を破らせるわけには、行かないんだよっ!」
 


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