俺様先生と秘密の授業【完全版】
 

 ……

 気がつくと。

 夕闇迫る海岸にいた。

 ムカシ。

 直斗と兄貴が沈黙の狼にいた頃。

 集会に使ったり、走る前の待ち合わせに使ってた場所だ。

 今の代の狼が使っているのかは、知らない。

 ただ、今の時間は。

 あたしを乗せてた直斗のバイクが一台、止まっただけだった。

「……ついたぜ?」

 声に、あたしは荒い運転で、めまいしてたカラダを、なんとか、直斗から引き離した。

 早瀬倉先生は、宣言通り、スピード違反も、信号無視もすること無く、天竜組をあっさりふりきり。

 最後には、ついでに岸君も、置いて来た。

 あたし、その様子を直斗のバイクの後ろに乗って、見てたけど……

 食べ物屋さんが生ごみを出すような、細い路地で。

 バイクがギリギリ通れるしかない幅を、直斗は、ほとんどブレーキをかけずに、突っ走ったんだ。

 確かに、スピード違反は、してない、けどねぇ。

 直斗のテクについて来れず、ゴミバケツにバイクごと、突っ込んだ気の毒な、天竜組の人びとと。

 最後の、廃工場の塀を飛び越えることのできなかった、岸君に至っては。

 大けがとかしてないか、心配になったほどだ。

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