俺様先生と秘密の授業【完全版】
「あまり狼が、うろうろすると喧嘩の元になるからな。
 代わりに、俺が愛莉を探してたんだ」

 俊介には、今、愛莉が見つかったことを連絡したから、という直斗に。

 あたしは、ほっとして、ぺたん、と直斗の隣に座った。

 ……だから。

 直斗が繁華街で、あたしを見つけてくれたんだ。

 そして、もし。

 直斗が見つけて、あたしをひょい、とさらってくれなかったら。

 探しに来た狼の集団と、その場にいた天竜組で、もっと大事の、喧嘩になってたかも知れなかった。

「……ありがとう」

 小さくつぶやいたあたしに、直斗は、にやり、と笑った。

「お、今日は珍しく、素直じゃん」

「だって」

「……彼氏ができて、少しは女の子らしくする気になったか?」

「……!」

 話のついでみたいに、直斗に、さらり、と言われて、あたしは息をのんだ。

「相手は、岸だって?
 愛莉はやっぱり、モテるな。
 俊介が知ったら、またひと騒動起こりそうだけど」


 ……!!


 違う……とも。

 そう……とも。

 あたしは、言えなかった。

 ただ、不意打ちで来た、直斗のひとごとみたいな言葉が信じられなかった。

「兄貴のことは、別にいいよ。
 だけど、直斗は、どう思った?」

「ああ?」


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