丘の上より
「――だから、合わせてほしいんだ…。」
男はスーツの裾を強く握りしめる。
「私は妻に謝ってないんだ。」
男は今にも崩れそうな目をしている。
「…泣いて、くれるのか?」
「え」
アクマはいつの間にか涙腺を緩め、頬に涙をつたらせていた。
「はは…、なんででしょうか。」
「――ありがとう。君が泣いてくれただけでも私は嬉しいよ。」
こぼれ落ちそうな涙を瞳に抱え、男は笑う。
「そうだな…、君に無理を言ってしまってすまない。」
男はカバンを手に、丘を降りようと後ろを向いた。
「―――ありがとう。」
そう言って男は降りようとする。