職人の娘。
「謝りに行くよ」


吹っ飛んだまま固まっている私の手を引っ張って、私とばあちゃんは車に乗った。


「全くあんたは誰に似たのか…伊紗希が駄目なんだ、あの子があんなんだから」


独り言のようにばあちゃんが呟いている。


伊紗希って言うのは、お母さんの名前。


ばあちゃんとお母さんは仲が悪い。


誰にだって分かる。


ばあちゃんはお母さんの悪口しかいわない。


お母さんも、そうなのかな…


そんな事を考えていたら、相手の家に着いてしまって、私は車から引きずり降ろされる。


そして目に入ってきたのは、見慣れたシーマだった。


「いっ…お母さん…」


シーマの運転席で煙草をふかし、眉間にしわをよせて、こっちを睨んでた。


「伊紗希!!」


ばあちゃんは視界にお母さんの姿が入るや否や、一発目に怒鳴った。


「お母さん…ごめんなさい…」


車を降りて、近くまで歩み寄ってきたお母さんからは、油の匂いがした。


「ほまれ」


ハスキーな声。


お母さんが、私を呼んだ。
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