たからもの
「私には無理だからさ。受験と恋愛の両立なんて。それに…家のこともあるし…。」

「うん…。」

「恋愛は、別れちゃったら終わりでしょう?千とは縁切ることなんてしたくない。このままの状態で付き合っていたら、私、千をいっぱい傷付ける。そして2人はきっとけんかしちゃう。それならいっそ、今別れて、友達に戻って楽しく過ごして、ずっと千のそばにいたいの。」

私は千に軽蔑されることを覚悟した。

あんなに苦しめて、自分も苦しんだ…東西の時と同じことをしているから…。

「…また、迎えにきてもいいか?」

「…え…?」

それは信じられない言葉だった。

「俺、お前が落ち着くまで待つから…。ずっとお前だけがすきだから…。」

千はうつむいて話していた。

千は…泣いていたんだね…。

また、私のために泣いてくれたね…。

私、必ず戻るよ。

千の元へ…。

千…待っていてね…。
< 118 / 231 >

この作品をシェア

pagetop