時雨の夜に
信号が青に変わって、一斉に横断歩道に零れ出す人。


ぼうっと立っていたら、思い切りぶつかられた。


ごめんなさいと言う気力はなくて、代わりに、地面に足をやっと着いていられるだけの意識はあった。


私にぶつかった人が、睨みながら吐き捨てていく。


「何か言えよ」
『何か言ってよ!』


それと重なる、過去の声。


しばらく前に、大好きだった彼氏に問いただした時のセリフだ。

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