時雨の夜に
『だって、約束したじゃない……!!』
『他に予定があったんだ、ごめん』
『私との約束より、大事なこと……? ねえ? 何か言ってよ? 他に……女の子がいるんでしょ……?』
あの彼は、じっと口を結んでいた。
『お願い、何か言ってよ……!!』
取り乱した私の顔を、冷静に見て、ただ深く頭を下げて、
『ごめん』と、『悪かった』と。
『もう終わりにしたい』
と──。
そのまま、涙をぬぐって彼の部屋を飛び出し、この交差点までやってきた。