時雨の夜に
付き合ってみなくちゃ分からないことだって、たくさんあるに違いない。



むしろ、『この人と付き合ってみたい』という気持ちの方が、圧倒的に強くなっていた。


しばらく黙考していた私に耐えかねたシグレが、突然口を割った。


「なんてね、冗談だよ。そこまで困ると思わなかっ──」

「付き合ってください」


私の声が、シグレの言葉をかき消した。

その発言に驚いている彼は、まるで狐につままれでもしたような感じだった。


「別に本気にしなくてもいいんだよ……?」

「私が。本気なんです」


その一言で更に仰天。

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