不思議病-フシギビョウ-は死に至る


「ところでー」

サヤが挙手する。

「……どこに行くんですかー」

そうだ、それを聞いていない。

「何言っているのかね?この時期は海に決まっているじゃないか」

暦の上ではたぶん、初夏。

「まだ六月だ!海開きしてねえ!!」

「なに、泳ぐ以外の海があるのだよ。なにより合宿らしくなる」

キョウスケはまともに合宿する気がないのかあるのかはっきりしてほしい。



「……泳ぐ以外の海、な」

エイヤは納得がいかないようだ。

「走る?……エイヤ走ってよ」

「いやだ」

「埋まる?……エイヤ埋まってよ」

「いやだ」

「じゃあ何するの……」

別にエイヤがどうのこうのという話ではないが、確かに何をするのだろう。

たとえば……。

「ヒトデなんか見てても楽しくないぞ」

「ナオキさんは潮干狩りとか普通の発想が出てこないんですか?」

潮干狩りは、出てこなかった。





「みんな、別に無人島に行くわけじゃないんだから安心して」

当たり前だ。

「しかし目標はあったほうがいいね」

キョウスケが、ふむ、と考える。

「明太子を食べに行く旅というのはどうかね?」

わけがわからん。

「よし、明太子を食べに行く『だけ』の旅にしよう」

「『だけ』ってなんだ!合宿は!?」


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