不思議病-フシギビョウ-は死に至る
七夕
家に着くと早速リンに借りた本に手を伸ばした。
中身は短歌集だ。
小説よりも詩よりも短い言葉たち。
その言葉を口に含む。
そこには意味があるのだから。
目の前に、情景が浮かぶ。
あるものは、雪の積もった田舎。
一人ぽつんと辺りを見渡す青年がいた。
あるものは、よく晴れた爽やかな海。
海と空の境界がわからないような青のキャンバスに、白鳥が一羽飛んでいた。
明確にどこがいいなんてわからなかったが、オレは極力その文を、その意味を読み取ろうとした。
不思議とつまらなくは感じなかった。
この向こうに、リンがいる気がしたから。
……まるで監視されているみたいだな。
そう思ったりしたが、オレはすぐに本に意識を奪われていた。
気がつくと外が真っ暗だった。
そして、また気がつくと外が明るかった。
「……大丈夫ですか?」
朝。
バスの中でリンがオレに聞いた。
「……昨日と今日ってつながってるんだな」
自分の顔を鏡で確認したら目元にクマができていた。
リンに借りた本を読んでいて、夜を明かしてしまったのだ。