不思議病-フシギビョウ-は死に至る
オレはバスに乗り込む。
――オレは愛用席がある。
運転手のすぐ後ろの一人席だ。
となりに誰かが座る心配もないし、出口から近い。
――そして、オレのすぐ後ろを愛用席としている少女に声をかける。
タイヤの関係で高くなった一人席。
そこにちょこんと座っている少女に。
「おはよう、リン」
リンと呼ばれた少女は、
「……おはようございます、ナオキさん」
優しい声でオレの名前を呼んでくれた。
上は生地が薄く長袖、下はスカート。
その色はコントラストがきつくない、薄い灰色と濃いグレーの組み合わせ。
いつか見たときと同じ、リンらしい、清楚な雰囲気のコーディネートだった。
「リン、その服似合ってるな……」
オレは真っ先のそのことを言う。
「……らしくないですね」
リンはいつかと同じように答えた。
そしてその後に、
「でも……ありがとうございます」
リンは少し顔を紅潮させて、オレが好きな微笑をくれた。
「ちゃんと来ましたね」
「悪いか?」
「いいえ、悪くないですよ」
リンは楽しそうに答えてくれた。
「オレは約束を守る男だ」
「確かに、今までナオキさんは約束を破ったことがありません。――それほど約束した記憶がありませんが」
そういえば何か約束したためしがないな。