不思議病-フシギビョウ-は死に至る

初恋



七月九日。

空は淡い青に塗りつぶされた。

昨日が雨だったせいか、少し蒸し暑い。

そんな日に、土曜日の休日に、オレはいつものバス停でバスを待っていた。

――思えば、こんなに胸おどる日はないだろう。

オレはケータイを確認する。

カレンダーの表示の、今日の日付。

「……リンとデート」

リンに誘われて、今日はリンとデートするんだ。

最初、文芸部部室前でリンと出会ったときはまさかこんなことになるとは思わなかった。

このめぐり合わせはなんだろう。

……運命かな?

一体今日は何をしようか?

どこへ行こうか?

――リンと二人きりで。

「……うわあ」

オレとリンの関係は、もしかしたら。



もしかしたら……恋人になるのかもしれない。



いつか、リンの笑顔がステキだと思った。

ずっとその笑顔を見ていたいと思った。

いつか、リンと一緒にいると落ち着いた。

リンと一緒にいることを心地よいと思った。

……今思えば、リンとは気があっていた。



ああ、そうか。

オレはリンのことが――。



普段一緒にいたいと思うのもそれで全部説明がついた。

だったら今日を楽しもう。

変に緊張しないのがオレらしいと思う。

まったく普段どおり。



そして、まったく普段どおりのバスが来た。


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