アスファルトと空
陽射しは良いが北風の所為か肌寒いが、空気が澄んでいて良い。
部屋に流れる音楽がよく響く。英国アイドルグループのアルバムを久しぶりに聴いた。

私の手は休むことなくキーを打っているが、頭の中は別のこと。
ブロンドヘアのブルーアイズの彼が優しく私に微笑み、軽くスマック。お得意のもしもゴッコ が始まった。
うっとりと彼とのデートを楽しんでいると、玄関の開く音がする。

窓の外を見ると、ルームメイトが自転車に跨っていた。
ルームメイトって言うか、私が居候しているだけなんだけどね。

どこへ行くのかと彼女に尋ねると、ボーっとしていたいのに用事があるので仕方なく出掛ける、と彼女は眉間に皺を寄せながら応える。
まずは1週間も延滞していた本を区立図書館に返却に行く、と。
その先は敢えて尋ねなかった。

ただ、私は用事が欲しいが何もないので、ボーっとしているとだけ付け加えた。

そこで一致した意見は、お互い交換できるものなら交換したい時間だね、といつもは一人でする無い物強請りを二人でしてみた。
ちょっぴりおかしい。
傍から見なくても滑稽だ。

そう思いながら彼女の背中を見送る。
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