colors
私は少し溜め息をついた後、
紅乃さん(って藤原さんが言ってたっけ)をみた。
「あ。うん。いいよ。」
彼女は微笑みながら応えてくれた。
え、なんかすっごく癒されるんですが。
「……香狩さん?」
「ん?」
私は紅乃さんをみる。
「あ。いや。ただ他の教科書はどうなのかなって…」
「ああ。そっか。んー。ちょっと見せてくれる?」
「うん。」
私は紅乃さんの持ってた教科書と私が持ってきた教科書を見る。
……うん。見事に全部違う。
「……紅乃さん。ごめん。今日一日だけ見せて。」
「え?」
「え、いやだから今日だけ見せてくれる?
ああ、嫌なら仕方ないけど…」
「え。あ、ううん。ただ今日だけでいいのかなって。
なんなら教科書届くまで見せてあげるよ?」
なんだ。さっきの「え?」はそのことか。
私は笑って(微笑んだだけだけど)紅乃さんを見た。
「大丈夫だよ。紅乃さんの持ってる教科書。私も持ってるから。」
「そうなの?」
紅乃さんは不思議そうに私を見る。・・・あたりまえか。
「うん。だって前の前の学校の教科書がそこのだったから。」
私は紅乃さんの持ってる教科書をさしながら答える。
「そうなんだ。なら今日だけで良いね。」
紅乃さんはまた優しく笑った。
「うん。」
つられて私も笑った。
「あ、ねぇ。」
私は少し黙った後、紅乃さんに聞いた。
「?なに?」
「名前、聞いてないと思って。」
私は紅乃さんの名前を知らないからそう聞いた。
「そっか。私の名前言ってなかったね。
私の名前は白鳥紅乃(シラトリ クレノ)だよ。
紅乃って呼んで。」
そういって紅乃さん。もとい紅乃はまた笑った。
「じゃあ私は朱嘉で良いよ。」
私は紅乃に言った。
「うん。これからヨロシクね。」
ガラッ
そこで先生が入ってきて私達は会話を止めた。