逝く前に
父
どのくらい時間が経ったのだろう。
目を開けた時には、辺りは明るくなり、人の声や足音が聞こえ始めた。
俺のいる部屋の扉が開くと、白い沢山の百合が目に入った。
あまりに白くて、綺麗で…その百合に目を奪われた。
『ありがとう……』
百合を持つ女性に、俺は礼を言った。
その声が聞こえていないのがわかっていても、俺は自分の最後を真っ白の無垢な百合で飾ってくれるその人に、礼を言わないではいれなかった。
そして、百合と共にかすみ草が飾りつけられると、より一層祭壇は華やかになり、その真ん中に置かれた棺の中の俺は、幸せな笑みを浮かべているように見えた。