逝く前に
「しーっ。もう少しだから、大人しくしてて」
大人の言う、もう少しってのは信用出来ない言葉だった。
何回聞いても、もう少しって。
全然、もう少しじゃないじゃん…ってムカついて席を立とうとした時、誰かが俺を抱いて外へと連れ出してくれた。
『親父……』
俺を抱いて外へ連れ出してくれたのは、親父だった。
あの真面目な親父が。
「幼稚園のお前には、あんなのつまんないよな。俺だって眠くなっちゃうよ」
そんな言葉を口にして、俺に笑顔を見せてくれたんだった。