逝く前に








「しーっ。もう少しだから、大人しくしてて」








大人の言う、もう少しってのは信用出来ない言葉だった。




何回聞いても、もう少しって。




全然、もう少しじゃないじゃん…ってムカついて席を立とうとした時、誰かが俺を抱いて外へと連れ出してくれた。








『親父……』








俺を抱いて外へ連れ出してくれたのは、親父だった。




あの真面目な親父が。








「幼稚園のお前には、あんなのつまんないよな。俺だって眠くなっちゃうよ」








そんな言葉を口にして、俺に笑顔を見せてくれたんだった。












< 20 / 33 >

この作品をシェア

pagetop