レンズのスガオ
「ちょっと汚いけど、あがって。」
「お邪魔しまーす…」
よく漫画とかじゃあ、彼氏が自分の家に彼女を入れる時にこのセリフを言う。
漫画の彼女は『えーっきれいじゃん!』と言って、本当にきれいな部屋へ足を踏み入れる。
でも、けんとの言ったことは漫画のように社交辞令ではなく、本当に少し汚かった。
散らばったCDに教科書や参考書に衣類…
でも、そこにエロ本や下着などはなかった。
それに、なんだか安心したような気分になってしまう。
ただたに、エロ本がないのは、別に女に不自由していないからだろうし。
「ごめん、ちょっとそこ座ってて。」
そう言って、けんとは散らばったもの達を少し片付けたり、隣の部屋に押しやったりした。
けんとの家に、けんと以外の人が住んでいることを語るものは何一つないし、かんじられなかった。一人暮らし…
私は、近くにあったソファに座り、テーブルの上の参考書をパラパラと見ていた。
数学の参考書で、ものすごく難しい。全然分からない問題ばかりだ。